茶人
1988年愛知県生まれ。
「茶と」、「Through the tea」主宰。
「櫻井焙茶研究所」、「OGATA Paris」を経て2024年より独立。
フランス・パリを拠点に国内外で茶、日本文化の普及に努める。
心に残る時間を人はどれだけもっているだろう
人生を振り返ったとき、温かな気持ちにさせてくれるものはどんなものだろう
お茶を淹れる人間として
また、ひとりのお茶好きとして
これまで多くのお茶の時間を過ごしてきた。
若かりし頃招待された一客一亭の夜咄の茶。
京都で受けた薫陶の茶。
台湾の師と繰り返した茶稽古。
フランスで味わった手揉み茶…
そのどれもに心があったと感じる。
舌の上で感じる美味しさだけではなく、心身ともに満たされた時間。
お茶に限らず心から心へと渡されたものは深く人々の心に残り、
またそれが繋がっていくと信じている。
今現在残る様々な文化や道具もそうして受け継がれてきた。
親から子へ。師から弟子へ。友から友へ。
大げさに聞こえるかもしれないが、お茶の時間自体もまた、
古の時代より一人から一人へと受け渡され、
その人の中で解釈され、また受け渡され、
そして今この手元へと連綿と受け継がれてきたものだと。
未だに各地で戦争が起こり、人々の心を苦しめる。
かつてサティシュ・クマールが行った平和のお茶の行脚のように、
一杯のお茶が世界を救うのではないか。
この連載もまた、人々に温かな優しさを届けるような、
そんな連載にしていきたいと思っている。
茶とは
目を閉じてみてください
そこには何があるでしょうか
どんな景色が浮かぶでしょうか
何の気配を感じるでしょうか
目を閉じて自分の感覚に入るようで
他のものの気配を感じる
それは何十年、何百年、何千年と
遠い昔からきたものから
今、隣にいる彼や彼女の鼓動まで
ありとあらゆるものの気配
茶とは、その感じる心に何を手渡すか、だと思っている。
心に花を
心にぬくもりを
心に香りを
心に言葉を――
今日のこのお茶があなたの心によき余韻を残せますように。