~地球の声に耳を傾ける~エコピープル

 

2024年冬号 Ecopeople 102「漁業ブ」設立メンバーインタビュー
小西圭介さん・
松田美穂さん・
松井香保里さん

秋の味覚の代表格に挙げられるサンマ(秋刀魚)、近年は大不漁が続き、漁業関係者だけでなく消費者にとっても危機感を覚えるほどでした。ただ今年は回復! 北海道根室の花咲港の初水揚げ、これに続く本州・三陸沿岸の港からも久しぶりの豊漁の便りが届きいています。ちなみにサンマ漁の端緒を切った花咲港の今年の初水揚げは67トン!なんと昨年の140倍です。しかし、年によって、何故ここまでの差異が生じているのでしょう?
近年の気候変動に伴う海流の移動、さらには世界中での魚食人口の増加に対応するべく外国漁船が日本近海でも操業するなど、日本の海を取り巻く環境が激変しています。

四方を海に囲まれた日本、我が国は世界6位の海洋国家です。日本の海の面積(領海とEEZ)は447万km2、これは陸地の12倍。日本近海には世界で生息する127種の海棲哺乳類のうち50種、約300種の海鳥のうち122種、そして約15,000種の海水魚のうち、25%にあたる約3,700種が棲んでいます。しかも、そのうち1,900種は日本固有種という世界にも類を見ない豊かな海に囲まれています。

しかし、この“豊かだった”日本の海で近年、三つの深刻な問題が進行しています。一つ目は “生きもの”の棲家の質と規模が劣化していること。二つ目は浅海域(干潟・藻場・砂浜)に生息する”生き物”の種類と数が激減し、生息範囲が減少していること。そして三つ目は獲れる魚の数が少なくなっていること。海洋資源の劣化と減少は単に、食糧の損失だけでなく、伝統的な食文化の衰退も意味します。

2022年11月、豊かな日本の海の再生と持続可能な日本の漁業の創出を提言する一般社団法人漁業ブが設立されました。設立メンバー はそれぞれ専門分野のエキスパートたち。「漁業ブ」のみなさんは漁業が抱える課題解決をご自身のパーパスと捉え、活動されるアクティビィストです。
一挙に秋の空気に入れ替わった10月初旬の朝、三名の設立メンバーが大雨の中、編集部にお越しくださいました。



取材日|2024年10月9日
取材場所|東京都港区「ecobeing」編集部
インタビュー・テキスト|太田菜穂子
写真|宇壽山貴久子





「漁業ブ」設立メンバー
インタビュー



小西圭介 KONISHI Keisuke
代表理事

1969年大阪府出身
大学卒業後、電通に入社。20年以上にわたって100社を超える企業、地域や自治体との取り組みを通じてブランドづくりの経験を積む。在籍中は米国のコンサルティング会社プロフェット社にてブランド戦略の世界的権威デビッド・アーカー氏に師事し、同氏の日本での唯一の直弟子として活躍。2020年に独立。2022年、持続可能な日本の漁業を支援する一般社団法人 漁業ブを設立。代表理事として、異業種の知恵とネットワークを活かした水産資源の付加価値の向上と、経営支援をするアクティビストとして活動を開始する。
著書「ブランドコミュニティ戦略」他。



松井香保里 MATSUI Kaori
設立理事

1966年富山県出身
大手食品メーカーに14年勤務後、独立。食品&飲食関係のコンサルティング会社で積んだ経験をベースにフードビジネスコーディネーターとして、食専門の商品開発、業態開発、コンサルティングや、食イベントのプロデュースなどを行っている。出身地の富山県の食・生産者を紹介するシーンでは、地元ならではの知見から、愛情あるきめ細やかなコーディネートをし、高い評価を得る。



松田美穂 MATSUDA Miho
設立理事

1974年東京都出身
大学卒業後、企業の広報を経て、日本料理店の企画広報に転身。20年間で100店舗を超えるレストランの誕生や企画広報に従事。フランス料理「カンテサンス」やスペイン料理「サンパウ」のミシュラン三つ星店、世界のスターシェフ30人を招致したガストロノミーレストラン「COOK JAPAN PROJECT」の高級店から、ナポリピッツァ「イゾラ」や立ち呑み「三ぶん」のカジュアル店まで、携わった店舗は多岐に及ぶ。
幅広い飲食業界・マスコミのネットワークを活かし、レストランやホテル、野菜・漁業・精肉関連会社などの広報や事業企画支援のみならず、料理家としても活躍する。



漁業ブ 公式サイト