~地球の声に耳を傾ける~エコピープル

 

2024年秋号 Ecopeople 101中村桂子さんインタビュー

2024年の夏、世界各地で人間の体温を大幅に上回る気温が記録され、日本国内でも35℃を超える猛暑日の観測地点が急増する状況に「身の危険」を実感します。

7月25日、アントニオ・グテーレス事務総長はニューヨーク国連本部での記者会見で「地球は沸騰時代に突入した。しかもそれは危険なレベルだ。」と語り、気候変動問題の解決に向け、世界が速やかに足並みを合わせることを訴えました。
この会見で事務総長は、熱波による推定死者数は年間で50万人に上り、世界の労働人口の約7割以上にあたる24億人が極端な暑さで高いリスクにさらされるという衝撃的な数字を示しました。
6月には、世界中のイスラム教徒がサウジアラビアの聖地、メッカに集結する大巡礼「ハッジ」で、1300人を超える巡礼者が50度を超える猛暑により熱中症などで死亡したとの報道はまだ私たちの記憶に新しいニュースです。

私たちは今、「未来の世代に大切な地球を“彼らの居場所”として引き渡すことができるのか?」その正念場に立たされています。

この現状を打破するための糸口を伺うべく、取材をお願いしたのは生命誌研究者の中村桂子さん。インタビューの場所として指定されたのは私鉄沿線駅前の喫茶店、永く地元の方々に愛されていることを窺わせるゆったりとした店内には、幅広い年齢のお客さまが適切な間隔をとりながら席を埋めていました。

キュートな刺繍を施した白いシャツを涼やかに着こなした中村桂子さんは定刻にご来店。その素敵な笑顔は、永年にわたり日本の生命科学をリードされてこられた著名な研究者というより、自然に優しい眼差しを注ぎ、日常を大切に暮らす生活者の持つ穏やかで、柔らかいものでした。





取材日|2024年7月30日
取材場所|東京都
インタビュー・テキスト|太田菜穂子
写真|宇壽山貴久子





中村桂子さん
インタビュー



中村桂子 NAKAMURA Keiko
生命誌研究者
JT生命誌研究館名誉館長

1936年生まれ、東京都出身。東京大学理学部化学科卒業後、同大学院生物化学修了。国立予防衛生研究所の研究員を経て、三菱化成生命科学研究所人間・自然研究部長、早稲田大学人間科学部教授、大阪大学連携大学院教授などを歴任。さまざまな職務と並行し、本の執筆や講演活動も積極的に行う。
1993年-2002年3月までJT生命誌研究館副館長。
2002年4月-2020年3月までJT生命誌研究館館長。