日本海にグッと拳を振り上げたような形で突き出る能登半島、その先端近くに位置するのが輪島です。輪島は、奈良時代後期から平安時代初期に起源を持つ朝市と共に、その精緻な技術と美意識で日本のみならず、世界を魅了する漆器、輪島塗の生産地として知られています。
人口23,000人余りの小さな半農半漁の小さな市に拠点を置き、最もサステナブルで、最も美しい食器や生活道具を世界に送り出す漆芸家、箱瀬淳一さん。箱瀬さんが目指す「未来へ継承するものづくりの姿勢」を伺うべく、編集部は晩秋の「のと里山海道」を一路、輪島に向け車を走らせました。「日本の道100選」にも選ばれたこの自動車専用道路は、なんと無料。金沢駅から大根布ジャンクションで海道に入り、柳田インターチェンジまではほぼ一直線で、左手に雄大な日本海を眺めます。ここから先は半島内陸へと舵を切り、紅葉の美しい里山の風景へと一変。海と山の両方の風景を堪能できる金沢から輪島へのドライブは約2時間、120キロの行程です。
いよいよ輪島に近づくと、黒瓦と格子戸、美しい板張りの壁の家々が現れます。午後の穏やかな日差しを受けた里山と人家が醸し出す風景は、まるで絵画のよう…。箱瀬さんの工房は輪島の中心部、道の駅から10分ほどの小高い場所にありました。
箱瀬淳一 HAKOSE Jun-ichi
漆芸家
1955年石川県輪島市生まれ。
1975年、蒔絵氏田中将氏に師事。5年間の修行ののち、下地職人に再び弟子入り。塗りと蒔絵を使いこなし、世界有数のラグジュアリーブランド等とのコラボレーションを展開する。輪島を活動拠点とし、漆芸家として東京を経由することなく世界に日本の漆文化を伝達・発信する。日本古来の伝統文様、花鳥風月などをモチーフにした蒔絵のみならず、独創的なフォルムや斬新なデザインを積極的に取り込み、日本が誇る「漆器」の持つ自然との共生によって生まれる美を、世界に向かって解き放っている。
【海外ブランドとの主要なコラボレーション活動】