地球という星に生きる私たち、母なる地球がもたらす恵みを五感で受けとめるシーン、それは『食』ではないでしょうか? 季節の変化を愛でる生活習慣を文化として継承してきた日本人の「くらしの暦」、「二十四節気七十二候」。ここでは、太陽の通り道である「黄道」360°に沿って15°ごとに24に分け、それぞれを「節気」として表した「二十四節気」を据え、さらにこれを3つに区分し、季節の風物を言葉に置き換えた「七十二候」という自然に寄り添う繊細な暮らしのあり様を示されています。
遠来の客人をもてなす「里山十帖」の夕餉のテーブル『早苗饗 SANABURI』に供する食材を手に入れるため、日々山に入る桑木野さんは、季節の繊細な移ろいを七十二の季節としてはっきり感じると話されます。彼女が掲げる『里山十帖 料理十条』には、自然と共鳴し、地域に根ざした文化と生産者とのつながりを重じるローカルガストロノミーのひとつの “解” があります。南魚沼を舞台とし、ご自身が大切にされてこられた健康のありがたさを核とし、美味しさだけでない、人生でもっとも大切なことを一皿一皿に表現するシェフ、桑木野恵子さん。旅で得た実体験をベースに今、“ひとつの場所に留まり、そこで 暮らすこと” を通して知った自然の奥深さを追求する彼女に、食と山、そして『幸福論』へと発展するロングインタビューとなりました。
桑木野恵子 KUWAKINO Keiko
里山十帖 シェフ/フードディレクター
1980年、埼玉県生まれ。都内のエステサロン勤務後、海外へ。オーストラリア、ドイツ、インド等を巡り、ヨガと各国のベジタリアン料理を学ぶ。帰国後、都内のヴィーガンレストラン勤務後、自遊人へ入社。温泉(共同浴場)と山歩きを日課に地域のおじいちゃんおばあちゃんと交流し、地に根付く食文化・風土、雪国の暮らしを肌で感じながら、ローカルガストロノミーを料理に表現。2018年、「里山十帖」料理長に就任、2020年「ミシュランガイド新潟2020 特別版」で一ツ星を獲得。2022年には「ゴ・エ・ミヨ2022」で15.5点とテロワール賞を獲得。