〜命をいただく〜エコキッチン

 

2026年初秋号

2011年、廃校になった小川小学校下里分校。里山の穏やかな自然となんとも懐かしい木造校舎の景観は地元だけでなく東京など近隣から訪れる人々にも愛されてきました。2018年4月、分校の用務員棟が「カフェ&移住サポートセンター」としてリノベーションされ、新たな出発をすることになり、2020年からカフェMOZARTの店長となった有賀さん。地元のオーガニック野菜をふんだんに使った身体が喜ぶランチとお弁当を提供しています。
近年、世界中で新たな食習慣として定着しつつある「お弁当文化」。目に美しく、食欲をそそるだけでなく、健康な身体をつくる“食の喜び”を「お弁当」に託してご紹介します。

ナビゲーター | 有賀香織

フードスタイリスト | グラフィックデザイナー | 分校カフェ MOZART プロデュース・運営

1975年、長野県辰野町生まれ。桑沢デザイン研究所リビングデザイン科卒業。グラフィックデザイン、フードスタイリング、ケータリングの仕事を続ける傍ら、有機農家とともに食農体験教室「畑のがっこう」を立ち上げたことをきっかけに、2020年、埼玉県小川町へ移住。小川町は、有機農業の取り組みが全国でもトップクラスを誇り、「有機の里」として知られる町。現在は、日本の有機農業を牽引してきた「霜里農場」の隣にある廃校を活用した分校カフェ MOZARTを経営し、地域で育った有機野菜や米をふんだんに使ったランチやお弁当を提供している。また、埼玉県立小川高等学校の学食も運営している。
畑から食卓までのつながりを大切に、地域の恵みを生かした料理を通して、季節の移ろいや自然とともにある暮らしの豊かさを発信している。



イラスト|太田有香 ©Yuka OHTA

第二回お弁当の時間



秋茄子を主役に、身近な野菜や薬味を散りばめた、季節のちらし寿司弁当

小川町は有機農業が盛んな地域で、季節ごとにさまざまな野菜が畑から届きます。
じゃがいも、茄子、里芋、大根などのポピュラーな野菜にも驚くほど多くの種類があり、一口に茄子と言っても、色や形、果肉の柔らかさ、皮の厚さ、味わいまで、品種によって異なります。
今回は、秋茄子を代表する定番品種「千両茄子」を蒲焼きに仕立てた、ちらし寿司のお弁当をご紹介します。

©︎ OHTA Yuka






*ナス
世界には約1000種類のナスがあり、色・形・大きさも地域によって実にさまざま、そのうち70種類ほどが日本では栽培されている。
原産地はインド東部という説は有力。日本には7世紀から8世紀ごろ中国から伝わったとされる。
正倉院の古文書で「天平勝宝二年(750年)茄子進上」とあるのが日本最古の記録。

農林水産省ホームページ




「うちの田んぼも出穂したよ」と嬉しそうな声。田んぼには、青々とした稲穂が風に揺れています。
昨年は「令和の米騒動」が大きな話題となり、いつも食卓にあるお米が、決して当たり前のものではないことを改めて感じた一年でした。
今年もこうして稲が育ち、穂をつけている姿を見ると、本当にありがたく、嬉しい気持ちになります。このまま無事に実りの秋を迎えられますように。心から豊作を願います。













昔、この辺り(埼玉県北部、秩父地方など)では、お米が貴重だった頃、少ないお米を大切に食べるために、季節の野菜や芋、豆などをたくさん加えて「かてめし」を作ったそうです。「かてめしは母の思い出の味」と、地元の農家さんが懐かしそうに話してくれたことを思い出します。「かてる」には、加える、混ぜ合わせるという意味があるそうです。

少ないお米を、少しでも美味しく、そして子どもたちがお腹いっぱい食べられるように。そこには、食材を無駄なく使う知恵と、お母さんたちの思いが一緒に混ぜ込まれていたのだろうなと思います。
そんな「かてめし」に思いを馳せながら、今回のちらし寿司には、貴重な有機米を使い、かぼすを効かせた酢飯に、人参、蓮根、油揚げ、小葱を混ぜ込みました。







秋茄子の蒲焼き風ちらし寿司

材料(2人分)
【すし飯】
米
1合
酢
大さじ2
砂糖
大さじ1
塩
少々
【かてめしの具】
にんじん
30g
蓮根
30g
油揚げ
1/2枚
砂糖
大さじ1
酒
大さじ1
※具材は、牛蒡、大根、きのこ、筍、こんにゃくなど、季節の野菜をお好みで。
しょうゆ
大さじ1
【茄子の蒲焼き】
小ぶりの茄子
3本
サラダ油
大さじ1/2
しょうゆ
大さじ3
みりん
大さじ3
酒
大さじ3
砂糖
大さじ3
粉山椒
少々
【飾り】
錦糸卵、胡瓜、茗荷、小葱、大葉などお好みの具材を。
作り方
  • すし飯を作る
    米は水加減をやや少なめにして炊く。合わせ酢を作り、炊き上がったご飯に混ぜ合わせる。
  • かてめしの具を作る
    にんじん、蓮根、油揚げなどの具材を細かく切る。鍋に油少々を熱し、具材を弱火で炒める。砂糖、酒、しょうゆを加え、汁気が少なくなるまで煮含める。
  • 具をすし飯に混ぜる
    2の汁気を軽く切り、温かいすし飯に混ぜ合わせる。
  • 茄子の蒲焼きを作る
    茄子はヘタを落として皮をむき、やわらかくなるまで加熱する。中火で約10分〜15分ゆでるか、ラップで1本ずつ包み、600Wの電子レンジで2分程加熱する。水気を切って粗熱を取る。
    茄子を半分に切り開き、フォークで表面にやさしく切れ目を入れる。水気を拭き、片栗粉を薄くまぶす。
    フライパンにサラダ油を熱し、茄子の両面を焼く。酒、みりん、しょうゆを加え、茄子にたれを煮絡める。お好みで粉山椒をふる。
  • 盛り付ける
    お重にかてめし入りのすし飯を詰め、茄子の蒲焼き、錦糸卵、蛇腹胡瓜、薬味を彩りよく飾る。
    今回はニラの花を使いました。









季節の野菜を無駄なくいただき、限られたお米を大切に食べてきた昔の知恵。そこには、食べる人を思う気持ちがありました。
そんな土地の記憶を受け継ぎながら、今年の実りに感謝していただきます。