本年度のエコキッチン、その厨房から季節のレシピを届けてくださるのは新潟県南魚沼の大沢山温泉にある「里山十帖」の桑木野恵子シェフ。厳しい雪国、その土地ゆえに継承してきた美味しさ、季節が創り上げる美しい景色を一年、さらに数年という時間サイクルで見守り、実在感のある料理を提供する『早苗饗』。テーブルを飾るすべての食材は、シェフ自らが山に入って採集した山菜やキノコ類、近隣の農家から持ち込まれる野菜、新潟県産の海産物や畜産物で賄われています。
今日、ここに生きることをひたすら感謝し、地球からの贈り物をしっかり食べきる食卓の姿、その景色と味をお届けします。
里山十帖シェフ | フードディレクター
1980年埼玉県生まれ。武蔵大学人文科学比較文学科卒業後、都内のエステサロン勤務。その後海外へ。オーストラリア、ドイツ、インド等を巡り、ヨガと各国のベジタリアン料理を学ぶ。帰国後、都内のヴィーガンレストラン勤務後、自遊人へ入社。温泉(共同浴場)と山歩きを日課に、地域のおじいちゃんおばあちゃんと交流し、地に根付く食文化・風土、雪国の暮らしを肌で感じながら、ローカルガストロノミーを料理で表現。2018年、「里山十帖」料理長に就任、2020年「ミシュランガイド新潟2020 特別版」で一ツ星を獲得。2022年には「ゴ・エ・ミヨ2022」で15.5点とテロワール賞を獲得。
「エコピープル」でのインタビュー記事 ≫
巻機山(まきはたやま)の山頂が白くなり始めると、里山の冬支度の準備が始まります。
『深山に3回雪が降ると里に初雪』という言葉が伝わる、谷川連邦の麓に広がる内陸盆地の魚沼には、年間100日もの降雪期があります。約8000年前の縄文時代の頃から多雪環境であったこの地域では、厳しい自然の中で生きる知恵が蓄積され、人々は雪国独自の風土と生活暦のなかで暮らしてきました。
冬支度には、雪が降る前にも、干し柿作りに大根干し、赤かぶや野沢菜の漬物作り、沢庵や柚子餅作りなど、たくさんの仕事があります。
師走の日が一番短い冬至を過ぎる頃、煤払いを済ませて正月準備をし、一年の年中行事が始まる正月を迎えます。
今回は、お正月のハレの日にも供する、こんにゃく芋から作った昔ながらの「手綱(たずな)こんにゃくのお煮しめ」*の作り方を紹介します。
(こんにゃく作りは、食材ラボ「こんにゃく芋」のページをご参照ください。)
*こんにゃくを馬を操る手綱に見立て、多綱を締めるように「心を引き締める」、また結び目に「縁を結ぶ」という意味を持ち、おせち料理の縁起物の一つとして知られる。