〜命をいただく〜エコキッチン

 

2023年秋号あるものすべてに活かし、
使い切る。

ナビゲーター | 桑木野恵子

里山十帖シェフ | フードディレクター

1980年埼玉県生まれ。武蔵大学人文科学比較文学科卒業後、都内のエステサロン勤務。その後海外へ。オーストラリア、ドイツ、インド等を巡り、ヨガと各国のベジタリアン料理を学ぶ。帰国後、都内のヴィーガンレストラン勤務後、自遊人へ入社。温泉(共同浴場)と山歩きを日課に、地域のおじいちゃんおばあちゃんと交流し、地に根付く食文化・風土、雪国の暮らしを肌で感じながら、ローカルガストロノミーを料理で表現。2018年、「里山十帖」料理長に就任、2020年「ミシュランガイド新潟2020 特別版」で一ツ星を獲得。2022年には「ゴ・エ・ミヨ2022」で15.5点とテロワール賞を獲得。

「エコピープル」でのインタビュー記事 ≫

第二回地域に根ざす

今年は卯年で、12年に一度の「卯年大祭」が魚沼の各地区ごとに行われています。ここ大沢地区では、お盆の時期に、地区の方による神楽が催されたり、巫女に扮してにぎやかなおはやしに合わせて練り歩きます。地区全体で一つの祭を作り上げることで、地域の活性化や一体化にもつながる、大変に意義深い伝統行事です。

山に暮らしていると、地域に根ざして行くことの大切さを強く感じます。地域のコミュニティと繋がり、自然への畏怖を持ち続けることで、人と自然との共生できる道が開けるのではないかと思うのです。

お盆を過ぎると、夏キノコがで始める時期。本格的にキノコを探しながら山に入る経験は初めてで、今年出会えたキノコの師匠について、毎回たくさんの学びを得ています。













師匠から、キノコには、樹木や植物・動物遺体を分解して養分を森に返すキノコ「腐生菌」と、樹木と共生して菌根をつくるキノコ「菌根菌」があることを教えていただきました。森のなかで人知れず世代を重ねているキノコたちも、まさに生態系の主人公の一角に位置づいているのだと、山の中で実感しています。朽ちた木に「木の子」が生え、土へと戻り、大地に循環していくのです。













私は今まで、単純に食べられるか、食べられないかだけでキノコを見ていましたが、自然界において大きな役割を果たしていることを知りました。共生する木々や、日々の天候、土壌を観察することが大切だと、師匠は教えてくれています。これからも学びは続きます。

参考:日本自然保護協会「今日からはじめる自然観察「にょきっ! キノコはどこに生えている?」



























アカヤマドリ(イグチ科のキノコ)と新米

9月に入ると、魚沼は本格的な稲刈りのシーズンに入ります。
山で採った、アカヤマドリと新米を柔らかく炊き、夏に作った梅干しを添えて。
山と畑の恵みです。
(アカヤマドリの説明と、下処理については、食材ラボ「キノコ」のページをご参照ください。)




























アカヤマドリ(イグチ科のキノコ)と新米

材料(4人前)
新米
1合
アカヤマドリ
100g
(なければなめこなどのキノコ)
セージ
1枚

適宜
醤油
適宜
自家製の梅干し
1個
バター
10g
作り方
  • 新米は柔らかめに炊きたいので、お米1合に対して、2倍の水を土鍋に入れる。
  • 強火で7分、沸騰したら弱火にして7分。3分蒸らして、柔らかい「煮えばな*1」の状態で炊き上げる。
  • 下処理を終えたアカヤマドリ*2を、乱切りにする。
  • 熱したフライパンに油をひき、セージを入れ香りを出す。切ったアカヤマドリを加え、炒める。しっかり火が通ったら、塩と醤油で調味して、最後にバターを加えて火を止める。
  • 器に炊いたご飯、アカヤマドリ、梅干しをよそって完成。

*1:火にかけたお米がご飯に変わる、ぐらっと煮えはじめた瞬間のご飯のこと。
*2:アカヤマドリの下処理は、「食材ラボ:キノコ」ご参照のこと。