第三回
人間史 二足歩行を始めた猿人がヒトになる


2025.09.22


およそ5億年前、カンブリア爆発が起こり、突如として現在見られるほぼすべての動物の「門(生物分類の基本的分類階級)」が出揃ったものの、動物はその後5度に及ぶ大絶滅を繰り返す中で進化してきた。5度目の大絶滅は白亜紀末期の6550万年前、直径10㎞の小惑星がメキシコ・ユカタン半島に衝突して始まった。この衝突で、直径170㎞のクレーターが出来、大量の粉塵が大気中に巻き上げられ、その結果、太陽光が遮断され、光合成生物が激減し、植物とそれを食べていた大型の動物たちを滅ぼした。この結果、恐竜時代は終焉し「哺乳類の時代」が始まった。

小型で夜行性、昆虫を主食としていた哺乳類は、恐竜の絶滅により昼の世界へ進出し、大型化した。当時の地球は非常に温暖で世界中に熱帯雨林や亜熱帯林が形成され、初期の哺乳類はそうした森林で育まれた。

チンパンジーと人類の共通祖先は、アフリカに広がる森の中に住んでいたが、地殻変動によって南北に伸びる高く険しい山脈が出来たことによって東西に分断されてしまった。その結果、東側では雨量が減り、森林が次第に消え、草原に変わった。生きるための糧を広大な草原から採集するためには、長距離の移動が可能で、両手にものを持つことができる二足歩行という進化をもたらした。

およそ700万年前、チンパンジーと人類の共通祖先から進化した猿人は既に直立二足歩行をしていた。石器(オルドワン石器)を使い始めた250万年前ころからは、約500㏄だった脳の容積が次第に大きくなり、40万年前ころには1500ccになった。脳はエネルギー消費が極めて大きい器官だ。重量は体重の約2%だが、消費エネルギーは体全体で使うエネルギーの約20-25%にもなる。極めて燃費の悪い器官である脳を維持するには高カロリーの食事が必要だが、脳を使うことで、効率の良い食料確保に繋げたのだろう。

そしておよそ20万年前、現生人類であるホモ・サピエンスが発生し、アフリカから世界へ広がってゆく。では何故ホモ・サピエンスが生物の頂点に立てたのか、それは脳の突然変異に由来する・・・

©︎ YAMADA Yuki



石田 秀輝
(合)地球村研究室代表 東北大学名誉教授

2004年㈱INAX(現LIXIL)取締役CTO(最高技術責任者)を経て東北大学教授、2014年より現職、ものつくりとライフスタイルのパラダイムシフトに向けて国内外で多くの発信を続けている。特に、2004年からは、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものつくり『ネイチャー・テクノロジー』を提唱、2014年から『心豊かな暮らし方』の上位概念である『間抜けの研究』を奄美群島沖永良部島へ移住、開始した。また、環境戦略・政策を横断的に実践できる社会人の育成や、子供たちの環境教育にも積極的に取り組んでいる。
星槎大学沖永良部島サテライトカレッジ分校長、酔庵塾塾長、ネイチャー・テクノロジー研究会代表、ものつくり生命文明機構副理事長、アースウォッチ・ジャパン副理事長、アメリカセラミクス学会フェローほか