第三回
地球環境問題とは何か?


2024.08.28




生物多様性、チッソの循環、気候変動、マイクロプラスチック、少なくともこの4つの問題に対して、2030年頃までに具体的な対応を取らねば、文明崩壊の引き金に指を掛けることになることはすでに示した。
では、これらの課題に対処療法的に対応してゆけば持続可能な社会を創ることが出来るのだろうか? 

残念ながらそうはならない。

世界の生物総重量は1兆2千億トンある。2020年12月に人間がつくった総人工物量が1兆2千億トンを超えた。
自然界の1兆2千億トンは、主に太陽エネルギーだけで完璧な循環をしているが、人工物はその役目を終えれば、ほとんどがゴミになる。そのゴミをつくるために、地下からエネルギーや資源を掘り出し続け、今でも年間300億トンの人工物をつくり続けているのだ。

これは、世界のすべての人が毎週自分の体重以上の人工物をつくり続けるのと等しい。
人間が穴だらけにした地球を自然が修復してくれているのだが、その修復能力が人間の搾取に追いつかなくなってしまったのが、現在の地球環境問題なのだ。

その原理は、人間活動の肥大化だ。我々は科学技術の進歩という御旗の下に快適性や利便性を求めてきた。
そのためには装置や道具が必要になり、その多くを地下資源・エネルギーに頼り、その装置や道具は役目を終えればゴミになる。本質は人間活動そのものにあるのだ。

このままでは未来の子供たちにすてきなバトンは手渡せない、ではどうするのか?
それは地球の修復能力以下で暮らすということ以外に無い。一つの地球で暮らすということだ。

今、日本人と同じ暮らしを世界中の人がすれば、地球が2.8個必要と言われている(エコロジカル・フットプリント)。
一つの地球で暮らすということは、1/2.8=0.36 現在の約4割の環境負荷で暮らさねばならないということである。

我慢することなく、ワクワクドキドキ心豊かに現在の4割の暮らしは可能か?
もちろん可能だが、そのためには、足場を変えた思考が求められる。



石田 秀輝
(合)地球村研究室代表 東北大学名誉教授

2004年㈱INAX(現LIXIL)取締役CTO(最高技術責任者)を経て東北大学教授、2014年より現職、ものつくりとライフスタイルのパラダイムシフトに向けて国内外で多くの発信を続けている。特に、2004年からは、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものつくり『ネイチャー・テクノロジー』を提唱、2014年から『心豊かな暮らし方』の上位概念である『間抜けの研究』を奄美群島沖永良部島へ移住、開始した。また、環境戦略・政策を横断的に実践できる社会人の育成や、子供たちの環境教育にも積極的に取り組んでいる。
星槎大学沖永良部島サテライトカレッジ分校長、酔庵塾塾長、ネイチャー・テクノロジー研究会代表、ものつくり生命文明機構副理事長、アースウォッチ・ジャパン副理事長、アメリカセラミクス学会フェローほか