日本の失ってはならない44個の文化要素の内、未来を創るに必要な要素は14個に集約される。14個の要素は4つのカテゴリーに分類されるが、それを少し丁寧に観て見たい。
<自然との関わり>というカテゴリーには、「自然に寄り添って暮らす」という要素がある。
じりじりと照り付ける夏の暑さ、すべてが凍つく冬の寒さ、季節のめぐりとともにやって来る気候の変化をあるがままに受け止める中に、かつての暮らしはあった。一日の過ごし方も同じ。日の出とともに起きて、田畑で働き、日暮れと共に一日の仕事を終えた。自然に寄り添う暮らしは、山の色、波の音、風のそよぎなどの自然の微妙な変化を五感で感じることで支えられていた。夏は家中のふすまを外して風を通し蚊帳を吊って寝たし、冬は風呂から出ると、どんぶく(綿入れ袢纏)を着て、すぐに布団に潜り込む。お天とさんと共に暮らし、季節の変化や自然のサインを見落とさぬように段取りをした。
自然に生きる生き物たちも同じ、だからこそ地球で唯一の持続可能な社会は自然だけなのだ。我々も、たった70-80年前までは、そんな循環の中で暮らしていたのだ。
今、キャンプや登山がブームだ、都会の喧騒を離れて・・・とお題目は付くが・・・では、都会の喧騒の中で、五感を研ぎ澄ませて暮らすことは出来ないだろうか? スマホや賞味期限や電気に頼らず、自分の感性を研ぎ澄ましてどこまで暮らせるのか、先達たちには遠く及ばないとしても、自足できるものがどんどん増えて行く、何だかおしゃれな暮らし方が見えて来そうではないか?
2004年㈱INAX(現LIXIL)取締役CTO(最高技術責任者)を経て東北大学教授、2014年より現職、ものつくりとライフスタイルのパラダイムシフトに向けて国内外で多くの発信を続けている。特に、2004年からは、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものつくり『ネイチャー・テクノロジー』を提唱、2014年から『心豊かな暮らし方』の上位概念である『間抜けの研究』を奄美群島沖永良部島へ移住、開始した。また、環境戦略・政策を横断的に実践できる社会人の育成や、子供たちの環境教育にも積極的に取り組んでいる。
星槎大学沖永良部島サテライトカレッジ分校長、酔庵塾塾長、ネイチャー・テクノロジー研究会代表、ものつくり生命文明機構副理事長、アースウォッチ・ジャパン副理事長、アメリカセラミクス学会フェローほか