12回目となった日本最大級の環境展「エコプロダクツ2010」、昨年末の12月9日、10日、11日の三日間、例年通りの東京ビックサイトに183,140人の入場者を迎え、賑々しく開催されました。環境への関心が益々深まる中、昨年は「G+C グリーン×クリーン革命!いのちをつなぐ力を世界へ」をテーマに掲げ、豊かな地球環境とそれを支える社会=「グリーン」と環境問題を解決するテクノロジー=「クリーン」との出会いから生まれるイノベーションをさまざまな人々と共に考え、次世代へと継承できる持続可能な社会形成に向かって行動を起こすというプログラムで構成されました。
2010年、十周年を迎えることができた「エコビーイング」編集部も、JFEグループの展示ブース内に特設スペースをいただき、これまで「エコピープル」にご登場いただいた方々の印象に残るメッセージと共に「倉本聰さんの富良野からのメッセージ」を映像展示することになりました。
倉本さんのメッセージ、「ゼロから考える」そして「ハチドリの一滴」は強いインパクトをもって、多くの来場者の心に響いたようです。
さて、「エコプロダクツ」展会場では最新技術の展示のみならず、連日さまざまなイベントプログラムと共に日頃の環境活動への表彰もしています。そのひとつに財団法人グリーンクロスジャパンが主催する「みどりの小道」環境日記コンテストがあります。 http://www.midorinokomichi.net/
12週間にわたり一日も欠かすことなく、自分が実際に実践した環境活動を日記としてまとめるこのコンクール。昨年度は全国の187団体の小学生児童が参加し、6,322人の小学生から環境日記が寄せられました。その中から最終的に金賞6名、銀賞20名、銅賞50名、佳作150名が選ばれ、12月11日(土)、東京ビックサイト内の会場で表彰式が開催され、受賞者は最新の環境技術の紹介を出展企業の会社の人から直接受けることができる見学ツアー"エコプロエコキッズ探検隊"に参加することが出来ます。
さて、この表彰式に参加した秋田県由利本荘市立西目小学校の袴田那央さんの見学ツアーの感想文が主催者のグリーンクロスジャパンからエコビーイング編集部に届いたのは1月下旬のことでした。西目小学校には銅賞受賞の4年生の袴田さんの他、6年生の佐々木彩乃さんと中川優衣さんが奨励賞を、そして2年生の鷹島花さんが審査員特別賞である若葉賞を受賞し、都合4名が入賞していることも分かりました。
全校で「みどりの小道」に取り組んだ西目小学校とはどんな小学校なのかを調べてみると、なんとそこには「ポトリ in 西目小〜ハチドリのひとしずく・ポトリ運動 〜いま わたしのできること〜」という環境教育プログラムが組まれていたのです。
編集部 西目小学校の環境教育についての指針を伺えますか?
工藤校長 なによりも自分たちのふるさとである西目という町を愛し、学び、自分の生き方を真剣に考える子供が育っていくことを願っています。その上でも、由利本荘市西目という町ならではのオリジナルな環境教育について考えてきました。環境は、まさに自分たちの源です。環境は自分自身を支え、育て、生かしてくれる大切な土壌であるという意識をしっかり持って、日々、この豊かな自然と向き合ってもらいたいと思っています。
編集部 具体的にはどのような指導をされているのでしょうか?
工藤校長 環境教育をその他の教科と分離するのではなく、可能な限り授業の中に盛り込み、一貫した指針として学習姿勢になじませたものにしたいと考えています。
たとえば今回の「みどりの小道」環境日記の全校での参加も挙げられると思います。12週間継続し、日記を書き続けるということは児童本人の意識もありますが、ご家族の協力、担任の先生方の根気ある指導が不可欠です。一学年2クラスの西目小、全校で323人の児童が6月から9月にかけての12週間、全員参加で実施し、そのうち170名の日記を選抜し、応募しました。一口に12週間と申しますが、子どもたちを支える周囲のご理解とご協力あったからこそ実現できたと思い返しています。
その他には、日本青少年赤十字活動へJRC委員会としての参加、こどもエコクラブ活動、冒険クラブの「水質検査」、そして全校で取り組む「ハチドリのひとしずく・ポトリ運動」は平成21年、22年と展開してきました。
編集部 「ハチドリのひとしずく・ポトリ運動」について伺えますか?
工藤校長 辻信一氏が監修した『ハチドリのひとしずく 〜いま 私のできること』(光文社刊)との出会いが始まりでした。まず、全校集会を開き、そこで私が『ハチドリのひとしずく』を読み、児童全員に環境を自分たちの手で守る大切さを話し、"地球温暖化"というテーマを一緒に考えることを提案しました。毎日の生活を"自分たちの便利"ではなく、"地球の大変"という視点からみつめなおしてみようと話したのです。その上で"わたしたちが地球のためにできることって何だろう?"と子供たち自身に考えてもらいました。
編集部 "地球はいま大変だ!" というテーマを具体的に整理されたのですか?
工藤校長 まず、「地球温暖化」、「エネルギー」、「ごみの増加」、「粗大ゴミ」、「水のよごれ」、「生物・動物の絶滅種」、「大気のよごれ」、「公害」、「食料問題」、環境に関わるさまざまなテーマをはっきり子供たちに話しました。その上でそれぞれに自分たちはどんなことができるのか? 子供たちに自分の頭で考えてもらったのです。
工藤校長 こんな具合に、色々と答えが返ってきました。「ポトリ運動」があったから、「みどりの小道」環境日記への全校参加もスムーズに実現できたのだと思います。
編集部 12週間の環境日記は、こどもたちにとって確かに高いハードルですものね。
工藤校長 子供たちはもちろんですが、日々ご家庭で"エコ"について話し合い、何かをちゃんと実行する、本当に大変だったと思います。でもこうして倉本さんと"同じ言葉"を使い、しっかり繋がっていることを実感でき、本当に感動しています。世界で一番小さい鳥であるハチドリだって、自分にできること(何回も水をかけること)をし続けたのです。大事なことは「できることからまず始める」、日記も同じ。毎日コツコツ続けることが子供たちの心を確実に変えてゆくのでしょうね。
- 由利 廉太郎(ユリ レンタロウ)です。
JRC(日本青少年赤十字活動)委員として活動しています。毎週月曜日には空き缶やペットボトルのキャップを回収しています。本当にいっぱい集まるので、きちんと分別して、リサイクルできるようにしています。空き缶を集めることで町もきれいになるし、お金にも替えられるので、世界中の人にも僕たちと一緒に、運動に参加してもらいたいと思います。 - 森岡 杏介(モリオカ キョウスケ)です。
冒険クラブで活動をしています。西目川の水質検査をしているのですが、最近は川底がコンクリートになったことで、流れが速くなったように感じています。川の水がだんだん減って行くのが分かるのでちょっと寂しいです。やっぱり川底を前のように泥に戻して、以前に川に住んでいたいろんな生き物たちが来てくれたらいいなと思います。
- 石川 悠汰(イシカワ ユウタ)です。
僕のうちでは、お肉やお魚を買った時にのっているトレーをお店のリサイクルボックスに戻しています。日本中にリサイクルボックスはあると思うので、いろいろなところでリサイクルをしている人たちに負けないよう、僕のうちもしっかりリサイクルしてゆきたいと思っています。
- 中川 優衣(ナカガワ ユイ)です。
私のうちもリサイクルをしています。うちでは使わなくなったモノが別の場所では必要とされ、喜ばれたりすることもあったりします。モノを交換したり、譲りうけたりして、世界でちゃんと使われていくといいなと思っています。リサイクル、ガンバリます。 - 宝池 綾乃(ホウチ アヤノ)
私はお裁縫が得意なので、古くなった洋服などをリメイクしてバッグを作ったりしています。作り直して、別のかたちで大切に使う、それが世界に広がっていくといいなと思っています。
- 佐々木 彩乃(ササキ アヤノ)です。
私のうちではお皿やお茶碗を洗うときにアクリルたわしを使っています。洗剤を使わないと水を汚さないと、テレビで言っていました。アクリルたわしをたくさんの人が使うようになって、水を汚さない運動が世界中に広がってゆけば良いなと思います。
- 佐藤 知恵(サトウ チエ)です。
私のうちでは、着古して、いらなくなった洋服を雑巾にして使っています。小さなことですが、皆でそういうのを続けて、世界に広めていきたいと思っています。 - 赤松 莉奈(アカマツ リナ)です。
少しでも木が増えたらいいなと思っています。そこで私のうちでは、おじいちゃんと協力していろんな種類の木を植えています。植えたら、ちゃんと育てるのですが、水を無駄にしないですむように雨水を使ったりしています。もっともっと木が増えたら良いなと思っています。
- 小田嶋 美羽(オダシマ ミウ)です。
私のウチは水や電気をムダにしないように、こまめに蛇口をしめたり、スイッチを切ったりしています。校長先生がしてくれた"ハチドリのひとしずく"の話のように、森の木のために少しでも頑張りたいと思いました。
- 高瀬 瑛太(タカセ エイタ)です。
僕らのうちでは、テレビのつけっぱなしとか、電気をつけたままにすることとか、水道の出しっ放しはすごく厳しく叱られます。僕たちも教わっていますが、地球の大切な資源を無駄づかいすることなく大切にしてゆきたいと思っています。 - 高瀬 陽介(タカセ ヨウスケ)です。
僕は"ハチドリのポトリ運動"が始まるまでは、電気を無駄づかいして、ずっとスイッチの消し忘れをしていました。でも校長先生から聞いた"ハチドリの話"を聞いてからは、電気をつけたら自分でかならず消すように心がけています。
- 岡田 隼来(オカダ シュンキ)です。
僕も"ハチドリのポトリ運動"を知らなかった去年まではずっと電気のつけっぱなしや、水道の水の出しっ放しとかを毎日のようにやっていました。でも校長先生から"ハチドリのポトリ運動"について初めて聞いてから、六年生になった今は、電気を使わないときはちゃんとスイッチを切ったり、水の出し過ぎには気をつけています。
- 佐藤 輝(サトウ テル)です。
校長先生の話を聞くまでは、水の出しっ放しとか、電気のつけっぱなしをしていました。でも、"ハチドリの話"を聞いてからは、電気をこまめに消したり、あと水の出しっ放しとかをやらなくなりました。お話を聞いて、本当に良かったなと思っています。 - 袴田 那央(ハカマダ ナオ)です。
私のウチではお姉ちゃんが着ていた洋服や使った道具などをお下がりでもらって、私が使っています。そのあとも、私にも小さ過ぎるようになってしまい、まだ十分使えるモノについては親戚の子供に廻して、みんなで使うようにしています。 - 鷹島 花(タカシマ ハナ)です。
私のウチではいらなくなった服や小さな布の切れ端を縫って、ハンカチや雑巾を作っています。そうすれば無駄にお金を使わずにすむので、そんなことが世界中に広まって欲しいなと思います。
東京ビックサイトで行われた、エコ日記「みどりの小道」の表しょう式に行きました。式の前に、エコキッズたんけん隊ツアーがありました。ビックサイトの中に700以上の会社のブースがあって、めい路みたいでした。歩くのも大変なくらい人がいっぱいで、家族づれも多くて、「こんなにエコについて関心を持っている人がいるんだ。」と、とてもおどろきました。
初めて会った子たちとグループになって、三つの会社のブースを回って、会社が行っているエコについて説明を聞いて勉強しました。一番印象に残ったのはJFEという鉄を作っている会社です。鉄を作る時に出るガスを電気に変えて、自分の会社で使う電気は自分たちで作っているそうです。会社はかんきょうを守るためにもがんばっていることがわかりました。この会社の鉄はスカイツリーや南極観そく船「しらせ」にも使われていると聞いて、大きい仕事でカッコイイなあと思いました。楽しかったので他のブースも回りたかったです。
表しょう式では、全国で10万人の子どもたちがエコ日記を書いたことを聞いておどろきました。今年はスリランカから3人のお友達も出席していました。世界中の子どもが、エコに取り組むことで地球を温だん化から守るんだと感じてうれしかったし、エコを考える世界中の人とお友達になりたいと思いました。エコ日記を書いているときは、毎日家族とエコの話をするようになっていました。本当にがんばってよかったと思いました。
西目は自然に恵まれた美しい町です。ただ、ともすると自分たちの環境へ感謝する気持ちをつい忘れてしまいがちです。今回、子どもたちの「ポトリ運動」や「みどりの小道」環境日記のおかげで、私たち親も改めて、具体的な行動に移すことの大切さを子どもたちから教えられたような気がしています。小さなことだから出来ること、そしてその小さな事実に真剣に向き合うことで、何かが確実に変わっていくことも親子共々体験できたように思います。 東京ビックサイトでの経験は、那央にとって本当に刺激的だったようです。環境がいかに大切で、世界中の人々が取り組んでいる重要な問題であるかを、実際に大勢の人々の中に自身の身をおくことで実感できたようです。東京にはさまざまな楽しい遊び場所があるのに、今回の東京で彼女が見たがったのは建設中のスカイツリー、ああいう大きさ、スケール感は西目ではなかなか実感できないことですので、いい思い出になったと思います。(談)
写真・文:太田菜穂子 / 岡山修平 撮影:高沢明弘