~地球の声に耳を傾ける~
エコピープル

2023年秋号 Ecopeople 97『木々の声を聴き、
風を読み、大地の呼吸を感じる。
循環と再生を、みんなの手で。』
矢野智徳さんインタビュー

3 SENSE of WONDER(自然への気持ち)

編集部
矢野さんのお話を伺っていると、人間の持つ「気持ち」が、自然と向き合う時には重要なポイントとなっているように感じます。「気持ち」を矢野さんはどのように捉えていらっしゃるのでしょう?

矢野
日本語には「気持ち」にかかわる表現がたくさんあります。“心配すること”を“気にかかる”、見守ることを“気にかける”など、「気持ち」の在りようが他者や外界との関係性を表す言葉として多くあります。
例えば単純な例ですが、「見る」という行為ひとつとっても、その人の「気持ち」が異なれば、そこに立ち現れる景色は全く違うものとして認識されます。




編集部
分かりやすい説明です。同じ杜に立ち、あたりを見回し、その自然から霊気やパワーを感じする人もいれば、何も感じられないばかりか、つまらないと感じる人もいる…。

矢野
その場の気を感じる、気を読むこと。大地の呼吸を感じようとする「気持ち」を持って自然に接することが、僕らの作業の出発点です。自分の五感フルに使い、目の前の自然と向き合う。風がどこから吹いて来て、水はどこへ動いているか、樹木の状況、昆虫や鳥の種類や動き、土の湿り気に乾燥度、そこで生きているひとつひとつの生き物たちの命の存在を確認しながら、現場の風景を気をもって見つめる(観察する)と、僕らのその場の循環を担うひとりとして、何をすればよいかが自ずと観えてきます。
自然科学の原点である観察、ただこの観察には「気持ち」という感覚がまず最初に求められると思うんです。「ここで、生き物たちの命はちゃんと息づいているだろうか?」と。僕らがそこに切実な気持ちを持ってに関わっていかないと大事なものが見えてこないんです。
全国各地の多くの鎮守の森、毎日、そこに居る人でも、この「気持ち」がないと、境内を囲む杜の叫びは聞こえてこないのではないでしょうか。
ただ、まだ、息をしているなら間に合います。
そこに居るものや、その場の呼びかけに気づく「感覚」を研ぎ澄ますことは僕ら人間にとっても生きる力を磨く行為です。大地の声を直に感じる力、それを持ちたいと願う「気持ち」を、手を動かす作業を通じて鍛えたいと思います。