~地球の声に耳を傾ける~エコピープル

 

2022年秋号 Ecopeople 93山極壽一さんインタビュー

この夏、世界各地から届く記録的な猛暑によるヨーロッパやアメリカでの山火事、自然発火によるロンドン都市部の火災、アルプス氷河の崩落にグリーンランド氷床の大規模融解、加速する地球温暖化が“待ったなしの段階”に到達していることを感じます。
CO2削減に向け国連がSDGsを掲げ、17の項目での具体的な取り組みが明示されたのは2015年。私たちは結束し、一人一人にができることを確実に実行し、未来の世代に自然界の生態系が循環する“健全な地球”を伝えて行かなければならない正念場に立っています。

昨年4月、総合地球環境学研究所(2001年創設| Research Institute for Humanity and Nature)の所長に京都大学総長を務めて来られた山極壽一先生が就任されました。山極先生といえば、ゴリラを中心とする霊長類の専門家として、世界的な評価を得る研究者です。“ローカルの叡智に学ぶ”を徹底し、現場主義を貫くそのフィールドワークのスタイルは、研究対象である動物たちのみならず生態系全体、現地の人々とその文化を重んじる“山極流”ともいうべきコミュニケーションの上に成立しています。

今世紀に入り、新たに提唱された時代区分「人新世」(アントロポセン)、人類が産業革命以来、劇的に変化させてしまった地球規模の環境の変化、これに歯止めをかけ、サステナブルな未来を実現するには、巨視的なビジョンの下、思想や哲学、文化などさまざまな観点から見直すことが急務であると語る山極先生。人類が直面するグローバルな緊急課題に私たちはどのように向き合うべきか? 先生が提唱される「レジリエンス(困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力)」を伺うべく京都に向かいました。






取材日|2022年6月21日
インタビュー・テキスト|太田菜穂子
写真|澄毅



山極壽一さん
インタビュー


山極壽一 YAMAGIWA Juichi
理学博士 / 人類進化論専攻
総合地球環境学研究所 所長
環境庁中央環境審議会委員 前京都大学総長

1952年東京生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科博士課程単位取得後退学、理学博士。
ルワンダ共和国カリソケ研究センター客員研究員、日本モンキーセンター研究員、京都大学霊長類研究所助手、京都大学大学院理学研究科助教授、同教授、同研究科長・理学部長、第26代京都大学総長を経て、2021年4月より現職。
屋久島で野生ニホンザル、アフリカ各地で野生ゴリラの社会生態学研究に従事。1992年よりコンゴ民主共和国で人と自然の共生を目指したNPO活動「ポレポレ基金」を推進。日本霊長類学会会長、国際霊長類学会会長、国立大学協会会長、日本学術会議会長を歴任。