第二回
地球環境の今


2024.07.02




1991年のバブル崩壊以降、日本は次なる定常化社会にジャンプできず、もう30年以上ものたうち回っている。それは地球環境と経済システムがともに限界状態にある中、双方に共通する解を与えることができていないためだ。その結果、日本を閉塞感が覆い、結果として少子化、高齢化、人口減少の負のループに陥っている。

まずは地球環境をみてみよう。

多くの問題があるが、そのうち危機的な順から「生物多様性」「チッソの循環」「気候変動」「マイクロ・プラスチック」の4つは、2030年頃までに具体的な解を見つけないと、文明崩壊の引き金に手を掛けることになると思う。

生物多様性では、例えばこの27年間で昆虫の76%を失ってしまった。昆虫がいなくなれば受粉ができず、植物の90%以上が生きていけなくなる。そうなれば昆虫は無論のこと、人間も生きられない。残念ながら、我々はその方向に全力で向かっているのだ。

人工チッソが発明されたおかげで化学肥料が生まれたが、その量は自然界の3倍を超え、土の富栄養化で、インドと中国を合わせた土地の面積で作物の育成が困難になりつつある。

気候変動に関しては、地球上の平均気温が毎年過去最高を更新しているが、海水温度の上昇が異常値を示し始めた。地球上では、循環に2千年以上をかける海洋大循環によって世界の気候がつくられているが、シミュレーション結果では2050年頃、早ければ2030年頃に循環が停止する可能性がある。停止すればどうなるのか? もう元には戻れない気候崩壊が起こる。

マイクロ・プラスチックは、表面にダイオキシン、PCB、DDTなどの残留性汚染物質を高度に濃集する。このマイクロ・プラスチックが既に大気中に滞留していて、北半球にいる限りどこにいても毎週5g、つまりクレジットカード1枚分を体内に取り込んでいるらしい。

なぜ、自分で自分の首を絞めるようなことを続けるのか? 

残された時間はもうほとんどない。未来の子供たちのために、我々はこの問題とどのように正対すべきなのだろうか?



石田 秀輝
(合)地球村研究室代表 東北大学名誉教授

2004年㈱INAX(現LIXIL)取締役CTO(最高技術責任者)を経て東北大学教授、2014年より現職、ものつくりとライフスタイルのパラダイムシフトに向けて国内外で多くの発信を続けている。特に、2004年からは、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものつくり『ネイチャー・テクノロジー』を提唱、2014年から『心豊かな暮らし方』の上位概念である『間抜けの研究』を奄美群島沖永良部島へ移住、開始した。また、環境戦略・政策を横断的に実践できる社会人の育成や、子供たちの環境教育にも積極的に取り組んでいる。
星槎大学沖永良部島サテライトカレッジ分校長、酔庵塾塾長、ネイチャー・テクノロジー研究会代表、ものつくり生命文明機構副理事長、アースウォッチ・ジャパン副理事長、アメリカセラミクス学会フェローほか