第八回
助け合う仕組み、
付き合いの楽しみ


2024.01.22




4カテゴリーからなる未来を創る14要素、今回は<人との関わり>の中の「助け合う仕組み」そして「つきあいの楽しみ」だ。

地域には、数軒の家がまとまって助け合う「結」とよばれる組織があった。近所同士が助け合うための仕組みで、必ずどこの地域にもあったものだ。「結」に属する家々は、田植え、屋根葺き、結婚式や葬式・・・どれも、一つの家族のように力を出しあい、助け合った。また、家長、姑、若い嫁同士が親睦を深める「講」とよばれるつながりもあった。
近所同士、隣の家の敷居はとても低く、子どもが上がり込んで自分の家のように遊び、夕方になるとご飯をごちそうになって帰るというのも、当たり前のことで、隣の家の子が悪さをすれば、自分の子のように叱りつけた。つきあいは煩わしいことではなく、にぎやかな交流が喜びを倍にし、つらいことや悲しいことを軽くしてくれることを、人々は知っていた。

ホモ・サピエンスとは「賢い人」のこと、自然と寄り添い、人と寄り添って生きることがその原点だった。そんな助け合いや、付き合いが、いつから鬱陶しいものになったのだろうか。他者との比較でしか自分の立ち位置を決められず、それを見せないために、たくさんの鎧を背負い続けているからなのかもしれぬ。自然の中では一人では生きて行けなかったことなど、すっかり忘れてしまったのだろうか。胸襟を開き、お互いの素を見せてしまう方が、何とも豊かに暮らせるのに…それが、賢い人の生き方だと思う。

このコラムで、日本の失ってはならない44の文化要素の内、未来に求められる14の要素の一部をお伝えした。その他にも「お金を介さないやり取り」「みんなが役割を持つ」「ささやかな贅沢」など、懐かしく身近だった要素を想像して頂きたい。厳しい地球環境や経済システムの限界を迎え、今一度、これらの言葉をかみしめ、未来のためにオシャレに紡ぎ直してみたいと思いませんか?



石田 秀輝
(合)地球村研究室代表 東北大学名誉教授

2004年㈱INAX(現LIXIL)取締役CTO(最高技術責任者)を経て東北大学教授、2014年より現職、ものつくりとライフスタイルのパラダイムシフトに向けて国内外で多くの発信を続けている。特に、2004年からは、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものつくり『ネイチャー・テクノロジー』を提唱、2014年から『心豊かな暮らし方』の上位概念である『間抜けの研究』を奄美群島沖永良部島へ移住、開始した。また、環境戦略・政策を横断的に実践できる社会人の育成や、子供たちの環境教育にも積極的に取り組んでいる。
星槎大学沖永良部島サテライトカレッジ分校長、酔庵塾塾長、ネイチャー・テクノロジー研究会代表、ものつくり生命文明機構副理事長、アースウォッチ・ジャパン副理事長、アメリカセラミクス学会フェローほか