第二回
未来の子どもたちへの
バトン


2023.06.20




未来の子供たちに心豊かに暮らせるバトンを手渡すには現在の36%程度の環境負荷で暮らす必要がある(縮減)。そんな厳しい環境制約の中で本当に心豊かに暮らせるのだろうか? 

厳しい制約の中で豊かさを生み出してきた先達は、どんな暮らしをしてきたのだろうか(90歳ヒアリング)? 600人を超える90歳ヒアリングから日本の暮らし(制約の中での豊かさ)を支えてきた44の要素(例えば、自然を活かす知恵、自然に寄り添って暮らす、何でも手づくりする、身近な生と死、皆が役割を持つ、生かされて生きる・・・)が見えてきた。

さて、これらを未来につなげるにはどうするのか?  世の中の色々なトレンドの中から、それが未来への予兆なのか、一過性のものなのかを44のキーワードを使って探せばよいのではと考え、トレンドが44のキーワードのいくつかを要素として持ち、同時に地球環境のことを配慮していることを、未来の予兆と定義した。

例えば、今ブームのDIY(Do it yourself)は、大量生産・輸送という資源やネルギーへの配慮がなされているので地球環境のことを考えており、44の要素の内、何でも手作りする、直しながら丁寧に使う、工夫を重ねる という要素を満たしているので、これは未来の予兆といえる。このような方法で10カテゴリー、145個の予兆を見つけ出した。

面白いことに、これらの予兆を構成する要素は、44個に均等に分散するのではなく、そのうちの14個に濃集することがわかった。

未来を創る14個の要素とは? じっくりと向き合う価値がありそうだ。

 

 



石田 秀輝
(合)地球村研究室代表 東北大学名誉教授

2004年㈱INAX(現LIXIL)取締役CTO(最高技術責任者)を経て東北大学教授、2014年より現職、ものつくりとライフスタイルのパラダイムシフトに向けて国内外で多くの発信を続けている。特に、2004年からは、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものつくり『ネイチャー・テクノロジー』を提唱、2014年から『心豊かな暮らし方』の上位概念である『間抜けの研究』を奄美群島沖永良部島へ移住、開始した。また、環境戦略・政策を横断的に実践できる社会人の育成や、子供たちの環境教育にも積極的に取り組んでいる。
星槎大学沖永良部島サテライトカレッジ分校長、酔庵塾塾長、ネイチャー・テクノロジー研究会代表、ものつくり生命文明機構副理事長、アースウォッチ・ジャパン副理事長、アメリカセラミクス学会フェローほか