第一回
未来の子どもたちへの
バトン


2023.05.22




奄美群島の南に位置する沖永良部島で暮らし始めて9年が過ぎようとしている。もう25年も前になるが、鹿児島から沖縄までの離島の旅の途中に立ち寄ったのが最初だった。それ以来通い続け、結局住人になってしまったという訳だ。「どうして沖永良部島?」何千回も聞かれた質問である。その度に「自然が豊かで酒が旨く、人が素敵!」というのが答えだった。大学で研究室の学生に同じような答えをしていると、そんな場所はどこにでもある、もっと他の理由があるのではないのか(もっとまじめに考えろ!)と詰め寄られ、2012-13年に学術調査をすることにした。

今、地球環境は大変厳しい状態にある。そんな折にどうしても避けられないのが「縮減」である。具体的には、現在の36%程度の環境負荷で暮らす必要がある。我慢ではなく、心豊かに縮減できるのか? 厳しい地球環境制約の中で心豊かに暮らす方法が求められているのだ。

すでにそんな経験をしてきた方々からヒントは頂けないかと始めたのが90歳ヒアリングである。すでに600人を超える方々から貴重な御話を伺い、制約の中で豊かに暮らすための44個のキーワードが見つかっている。

実は、沖永良部島にはそのうちの30個があることがわかった。とてつもなく濃い、そしてそれが、この島に惹かれ続けた理由だと分かった。

日本の文化要素とも言えるこのキーワード、それが未来の子供たちのバトンになるのだろうか、これからゆっくりと紐解いてみたい。

 

 



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石田 秀輝
(合)地球村研究室代表 東北大学名誉教授

2004年㈱INAX(現LIXIL)取締役CTO(最高技術責任者)を経て東北大学教授、2014年より現職、ものつくりとライフスタイルのパラダイムシフトに向けて国内外で多くの発信を続けている。特に、2004年からは、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものつくり『ネイチャー・テクノロジー』を提唱、2014年から『心豊かな暮らし方』の上位概念である『間抜けの研究』を奄美群島沖永良部島へ移住、開始した。また、環境戦略・政策を横断的に実践できる社会人の育成や、子供たちの環境教育にも積極的に取り組んでいる。
星槎大学沖永良部島サテライトカレッジ分校長、酔庵塾塾長、ネイチャー・テクノロジー研究会代表、ものつくり生命文明機構副理事長、アースウォッチ・ジャパン副理事長、アメリカセラミクス学会フェローほか